こんにちは。SDLでクリエイティブディレクターをしている安藤です。先日、六本木アートカレッジ2017「ジャンルを超えて 面白く働き、生きる」のオープニングセミナー『〈エンタメ×経済〉で面白くする』を聴講してきました。

登壇者は、大ヒット映画の『君の名は。』や『世界から猫が消えたなら』などのプロデュースで知られる映画プロデューサーの川村元気さんと、経済学者で政治家でもある竹中平蔵さん。
それぞれの自己紹介後、竹中平蔵さん(以下:竹中さん)主導によるトークセッションが始まりました。川村元気さん(以下:川村さん)が、ご自身の創作活動に対しての考えやヒット作についての考察を展開。途中、竹中さんが質問や解説を加えて、あっという間に一時間が経過し、残りの30分間は会場からの質疑応答に費やされました。
面白さを発見、組み合せを発明する
「素材が『テーマ』、調理は『クリエイティブ』、最後の盛りつけは『広告や宣伝』で、企画は料理に似ている」と川村さんは言います。その中で、新しい組み合せを発明することが、ヒットにつながるそうです。
「君の名は。」の場合は、これまで長編アニメを作ったことのなかった新海誠監督に、メジャー作品に携わってきたベテランスタッフを組み合せたこと。主役の声優に神木隆之介というベテラン俳優と、白石萌音という新人の新旧の役者の組み合せを試みたこと。そして、主題歌にRADWIMPSを使ったことが、「組み合せの発明」だそうです。ちなみに、劇中に4曲もロックを入れたのは、アニメ映画では初めての試みだそうです。
うまくいくときは、ロジックではなくヒラメキ。

数々のヒット作に共通してあるものは、「こうすれば面白い」という『ロジック』ではなく、「なんとなく面白そう」という『ヒラメキ』に近いものだそうです。
そう聞くと、「なんだよ、結局はカンかよ」と思う方も多いかと思いますが、実はこの『ヒラメイタ』の後が大切で、川村さんはヒラメキを分析して、人に説明できるように言語化する作業をするそうです。この作業を川村さんは、「クリティカル(分析)→クリエイティブ(発展)→エフェクティブ(伝える)」だと言います。
無責任な組み合せがイノベーションを生む
「これとこれを組み合せるとどうなるのだろう?」。川村さんは、誰も結果が想像できないような組み合せをするようにしているそうです。もちろん失敗するリスクも高いのですが、成功するとリターンが大きいから、あえてやるようにしているそうです。
確かに、「君の名は。」の組み合せも冒険的です。ただ、面白いことにそんな冒険的な組み合せでもヒットした後には、多くの人が「自分もやろうと思っていた」と言うそうで、そういう人が多ければ多いほど、作品がヒットするそうです(笑)。
発見は量よりも質。メモはしない。
これだけ続けてヒットを生み出す川村さんに、会場からは、「どのようにアイデアを発見・ストックしているのか?」という質問が出ました。それに対して、「実はメモは取っていない」と意外な答えが。脳裏にこびりついていれば、忘れたとしてもいつか思い出すはずだからだそうです。
会場では、例え話として、2Lのペットボトルの水を持つ人を挙げていました。六本木の町を荷物も持たずに2Lのペットボトルの水だけを持ち歩く人を見たら、「この人は何者だろう?」という違和感を感じるはず。そういう違和感の記憶が、脳にこびりついていたら、メモを取っていなくても、ふと思い出して企画に生きることになるからと。
面白く働き、生きるには、ワケがわからないところに身を置くこと

講演の最後に、今回のテーマである「面白く働き、生きるには?」に対して川村さんは、「ワケがわからないと思うところに身を置くことをすすめます」と答えていました。安全なところには、面白いものはないそうです。嫌々・しぶしぶやったときや、ムチャぶりをされたときに、面白いものができることが多い。だから、その状況を『楽しんで、受け入れる』ことが大事なのだと。
そして、「いつでも新人になれる場所を探しています」という、今やなんでも自由気ままにできそうなヒットメーカーとは思えない、いや、気鋭のヒットメーカーだからこそいえる言葉を最後に、セミナーは幕を閉じました。私もクリエイティブ業界の片隅に身を置くものとして、多くの気づきを得ることができました。これかもムチャぶりを楽しんで、受け入れることができるよう頑張っていこうと思います(だからといって、無理にムチャぶりしないでもいいですからね(笑))。